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算数ではなくデッサン

2023-02-03

辻本達也

 何かをつくること(もしかすると会話とか人間関係もそうかも)は算数的に問題-解決-問題-解決と進む作業ではない。デッサン的に、大きな下書きを描いてから細部をすこし描き、また大きな画に戻ってみると細部が修正されるような。そんな往復運動で進んでいく。

 僕はずっと、何でも算数的にやってきた。たぶんそうで。

 でも、雑誌をつくり始めてから、ことあるごとに壁にぶつかり、ショックを受けて寝込み、寝込んだせいで雑誌が進まないことに悩み、寝込んで、何日も経ってからようやく作業を再開するというのを繰り返していた。

 それは算数的なプロセスをマインドセットにしていたからなんじゃないか。目の前の作業はデッサン的なのに、マインドセットは算数的で、だからそりゃぶつかる。実作業では、引き返して修正する作業や、計画(どうしてかいつも「計劃」が第一候補になる)の見直しが生じるのは当たり前だ。なのに、「停滞や修正はあってはならないものですわよ!」とマインドセットがペシッと注意してくるわけで、自分で自分を殴るような形になっていた。

 算数的なマインドセットの僕が、僕を叱る。

 もちろん算数だって戻ることも修正もある。でも、まあある程度、解法を思いついてしまえばそのあとはまっすぐ進める。そんな意味で、算数とデッサンは違っている。ただ、デッサン的に制作していくことは、これまた特殊な辛抱強さが要るから何事も容易くない。スーパーマリオブラザーズしかやったことがないのにエルデンリングをプレイし始めたら、たぶん困惑する。

   

   

(*1:『脳の右側で描け』学校教科書にすべきデッサン本)

(*2:上野学さんのツイートが記事全体の発想元になった)

   

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